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今、アルバータ州民にとって最も大きな感心ごとと言えば、2日後に迫った州議会総選挙。
しかも今回の総選挙、今までとは少し違い、政権が大きく変わる可能性が高い。

アルバータは、カナダでもトップクラスの右寄り保守支持州。
国民の支持政党が比較的ドラマチックに変わり易いカナダにおいて、現在のアルバータ政権党である進歩保守党は、41年間も変わらず安定してアルバータ政権を握って来たことからも、保守支持の強さが良くわかる。
その背景には、巨大な石油産業との癒着がある。

しかし、そんな進歩保守党を脅かすライバルが出現した。
その名も、『ワイルドローズ党』。アルバータの州花であるアルバータ・ローズに因んで付けられた名前からは、明確な政治的思想は伺えないが、ワイルドローズ党はアルバータの主要政党の中では最右翼に位置する。
ワイルドローズ党は、2007年に政治同盟として発足、翌2008年に政治政党として正式登録された、非常に新しい政党である。
この同盟体が、たった4年で41年間安定して州を治めて来た保守党を脅かす程急激に勢力を強めたのは何故か?
それは...


2008年、当時アルバータ州知事なったばかりのエド・ステルマク(Ed Stelmach)が、ノルウェーを見習ってガス・石油会社の特別税を引き上げようとしたのがきっかけ。(ノルウェーでは、企業税28%に特別税は50%の合計78%が税金として収められている。そのおかげで政治資金は潤っており、充実した社会福祉が成り立っているとのこと。公の大地を掘って得た利益の一部を社会に還元する、というのがガス・石油特別税。)
巨額な富を得ているエネルギー産業の税率を上げることで、社会福祉への還元を狙った(アルバータ州の企業特別税はノルウェーの半分以下、引き上げ率も低かった)ものの、ちょうど経済の悪化と重なり、ステルマクは不景気に苦しむエネルギー業界からの反発を受け、進歩保守党そのももの支持率を下げてしまう。この支持率の低下により、最終的にステルマクは辞職、そして昨年秋の知事選挙へと繋がる。
因に、企業特別税を2%上げるだけでも、年間億~兆単位の莫大な税収入になる。その税収入を資金不足であえぐ教育や医療に回そうという計画だったが、エネルギー会社のご機嫌をそこね、政権を他党に奪われること恐れたため、引き上げは実現しなかった。結局予算不足により、学費の値上げ、教職員のカット、医療の私立化推進へと向かうことになる。

さてここで、進歩保守党の政策に不満を持った石油業界がどうしたかというと、保守党を見捨て対抗するため、出来立ての最右翼である『ワイルドローズ党』へ多額の政治献金を渡し始める。
政党への寄付金は税金の控除対象になるので、企業としてはどこかの政党に寄付金を収めたい。その結果、特別税を上げようという保守党の代わりに、石油業界からの献金は、ワイルドローズ党へと流れて行くことになった。そしてワイルドローズ党は、多額の政治資金を武器に着々とキャンペーンを実施、支持層を広げていった。

そんなワイルドローズの最大の武器は、41歳カリスマリーダーのダニエル・スミス。
ダニエル・スミス
美貌と自信に満ちた優しげな微笑みと、つい誰もがうなずいてしまいたくなる巧みな話術で、純朴な田舎の民を魅了していく。都会でも、石油業界総本山のカルガリーなどで強い支持を誇る。


政党は州内には他にも自由党、新民主党、アルバータ党、そして緑の党などがあるが、いづれも中道から左よりで、アルバータ州内では非常に勢力が弱い。
なので現在、ダニエル・スミス率いるワイルドローズ党と、昨年10月に新知事になったばかりのアリソン・レッドフォード率いる進歩保守党の右翼保守一騎打ちになっている。


長年安定していた保守党政権がついに脅かされ、結果として政治が変わる可能性があるが、私としてはワイルドローズ党が政権を取る事に不安と疑問を感じている...というよりも、最も政権を取って欲しく無い政党である。
なぜなら、エネルギー業界からの多額の献金で成長した政党なので、業界との癒着が凄そうなこと。政治を担う政党が、一業界と著しく癒着することに懸念。
そして候補者の殆どが、石油業界、農業従事者と牧師で成り立っていること。教育、文化芸術、医療関係者がほんの少ししかおらず、専門に偏りがあり明らかに視野が狭そうな上、州を治める政治に1つの宗教リーダーだけが従事することへの疑問。
そして、政治的ビジョンが20年先を見ているのではなく、20年前に逆戻りと言われている事。

それから、最近牧師候補者がブログなどにアップし即座に削除した、「同性愛者は死後も永遠に地獄で焼かれ続ける」、「シーク教徒やイスラム教徒は同胞のみに語りかけるが、白人は全ての民に語る」などの反同性愛、人種差別的発言。こういう事を公に述べてしまう人が政治に関わる、しかも政権を取ってしまうということに不安を感じる。
後でどんな言い訳しても、一度述べてしまったそれが本音なはず。
ここで、『白人は...』と述べてしまったように、ワイルドローズ党は、他の主要政党の中でも最も白人率が高い。多人種のカナダにおいて、白人以外の人種の立候補者数が最も少ない党な上、リーダーが女性だけれど、女性候補者の数の少なさでもトップである。


花の香りよりも、アンチ・ゲイに性差別、人種差別に宗教差別を匂わせるワイルドローズ。
他にも、リーダーのダニエル・スミスの脅威発言、「地球温暖化は信じない」や「文化芸術は大切ではない」などにも驚愕だし、出来たばっかりで偏った専門知識と思想をもつ候補の軍団に、アルバータの今後4年間を任せてしまって、本当にそれで良いのか、アルバータン!

私には選挙権がないけれど、ワイルドローズが政権とるくらいなら、(どうせアルバータでは他の党には政権取りは無理なので)後4年この人(アリソン・レッドフォード)に頑張って貰いたい!
アリソン・レッドフォード
                『6ヶ月じゃ、結果がでないわよ!』



現在これまで自由党や新民主党などの、中道・革新系政党を指示してきた多くの有権者が、人生で初めて進歩保守党に投票しようという動きもある。保守は指示していないけれど、「ワイルドローズ」が政権を取るよりはマシとうい考え。自分の思想や主義を押し殺してでも、とにかく勝たせたくないというのは理解できるが、その結果アルバータ全体が完全に保守右翼議員のみになってしまうという恐れもあり、本来中道・革新系支持の有権者にとっては、非常に悩ましい選挙となりそう。
比較的右よりな新聞『エドモントン・ジャーナル』でさえ、毎日何気にワイルドローズへの不安や疑問を投げかけている。

そんな、中道・革新系支持層を恐怖に陥れているワイルドローズ、最後に印象的な写真を。

ワイルドローズ
キャンペーン始まって間もなくの頃に話題になったバス。
バスの後輪が、スミスの乳にに見えるということで、速攻デザイン替え。誰かが、スミスが女性でなかったら話題にならないはず!とか言ってたけれど、やっぱこれはおっぱいに見えますね!?しかも、凄く強そうなブラ系で。


そして、こちらはアンチ・ワイルドローズが作ったと思われるポスター。
ワイルドローズ
『終末が来るのに待ちくたびれたら、ワイルドローズ・カントリーに! ~アルバータ~』
写真はもちろんワイルドローズが政権を取ったら、積極的に開発を進めたいアルバータ・オイルサンズと、石油流出事故で犠牲になったカモです。
名前の由来のアルバータローズなんて、死滅していそうな勢いのイメージです。


最後に、先に述べた「シーク教徒やイスラム教徒は同胞のみに語りかけるが、白人は全ての民に語る」との賜った牧師候補、後にダニエル・スミスが「うっかり間違えを口走ってしまっただけ。」と弁護したけれど、一度なら、怪しいけれどうっかり間違えたのかも?と思う人もいるでしょうが、また言っちゃってます。今度は、パンジャビ・コミュニティで。

自称ドクター、ロン・リーチ候補、パンジャビ・コミュニティのテレビインタビューにて、
「パンジャビのリーダーが語りかければ、パンジャビの人々は耳を傾けれるけれど、それでは広がりがなく、代わりに白人が語りかければ全ての人々が耳を傾け、コミュニティを立ち上がらせることが出来ると信じています。それが私の仕事です。」(要約)
と熱弁中、3度も”白人”を強調。
YouTubeで流されたビデオ、ここに載せようとこの記事書いていたら、その間に削除されてました!
後でまた 別のところでアップされていたのを発見。
また落とされてしまうかもしれないですが、その前に!

隣に座ってるパンジャビのお兄さんが、微妙な表情を浮かべています。特に一番最後が..。


今回のダニエル・スミスのフォローは、『個人の言論の自由を尊重』とのこと。2度目はもう『うっかり』なんて言えませんね?
それにしても速攻削除するなんて、やっぱり言ってはマズい事だったっていうのを公に示したようなもの。個人の言論の自由を尊重するのなら、削除しなくたっていいわけだし。



アルバータ州議会総選挙、結果まであと2日。 結果が非常に気になります。

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コメント
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││06/19 18:48│編集

当方は日本在住でございます。1990~93年にバンクーバーとトロントに滞在しました。
アルバータはバンフ・カルガリー・エドモントンに立ち寄っています。PSTがないので物価は安いですが、冬は寒いし、偏屈な人は多いし、あまり住みたくないところです。

よかったら、mixiの「カナダの歴史と政治」コミュニティに来ませんか?
http://mixi.jp/view_community.pl?id=1611536
高橋│URL│04/25 06:03│編集

高橋さん、

結果出ましたね。私はワイルドローズ、もっと議席を取るかと思っていました。
ギリギリなくらいに。
でも、候補者の偏った意見や、議会経験者の少なさ、専門的フィールドの偏り、政策への不安は投票に大きく影響を与えたと思います。
都市での政策が非常に弱かったため、都会票を集めることは出来ませんでした。
中北部での落選というのは、ちょっと意外な感じもしましたが、まだオイルサンズ積極開発に賛成するよりも、身近な環境破壊への不安を持つ住民は多いと思います。
Akitanic│URL│04/24 12:24│編集
 
こちらにまとめました。
http://blog.so-net.ne.jp/canadian_history/2012-04-24
カナダの新聞をいつも3紙読んでいます。今日は残業を終えて帰宅して、2時間半で書き上げました。何とか2時間以内にしたいのですが。
世論調査大ハズレで、PC圧勝でした。ワイルドローズは都市部で全く受け容れられませんでした。同党は、フレッシュなイメージとはあまりに遠い守旧派であり、エスニックな市長のいる街では支持されなかったようです。自由党支持者が、大量にPCに投票したようです。
ワイルドローズは、党首はいいのですが、政策的に洗練されていなかったのではないでしょうか。スミスは将来連邦首相も夢ではなかったのですが、手痛い敗北を喫しました。
高橋│URL│04/24 07:44│編集

高橋さん、

コメントをありがとうございます。
いよいよ明日、結果が出ます!

アルバータ南部で強いワイルドローズが勝利しそうな予感もしますが、ギリギリでPC逃げ勝ちの可能性もあるかなと思ったりしています。

日本にお住まいなのですか? カナダ事情にとても詳しいのですね!



Akitanic│URL│04/22 19:42│編集
「ハイヒールを履いたマニング」
大変くわしく書かれていますね。Boob busまで取り上げていただき、感無量です。
明日はやっぱり、ワイルドローズなのでしょうか。スミスが政権に就いたら、地球温暖化の原因が化石燃料だとは証明されていないと主張するカナダ初の政権となります。アルバータはかつて、世界唯一の社会信用政権を成立させた土地柄です。
堅苦しい眼鏡をかけたプレストン・マニングは受け入れられませんでしたが、「ハイヒールを履いたマニング」は受け入れられるのでしょうか。
高橋│URL│04/22 02:45│編集
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まとめteみた.【アルバータ州議会総選挙のゆくえ】
今、アルバータ州民にとって最も大きな感心ごとと言えば、2日後に迫った州議会総選挙。しかも今回の総選挙、今までとは少し違い、政権が大きく変わる可能性が高い。アルバータは、カナダでもトップクラスの右寄り保守支持州。国民の支持政党が比較的ドラマチックに変わり?...